人工妊娠中絶は、誰でもどんな場合でもできる、というわけではありません。法律によってできる場合とできない場合がはっきり決められています。また、一般的には妊娠中絶はすべて自費診療となり、保険適用ができないのですが、保険が適用できる場合もあります。
今回は妊娠中絶に関する基礎知識と、妊娠中絶に保険が適用されるかどうかについて詳しく解説します。
妊娠中絶はどんなルールで行われるのか
妊娠中絶は、どんな場合でもできるとは限らないものです。法律でできる場合やできる時期、誰が妊娠中絶をおこなっていいのかなど、詳しいことが決められています。ここでは、人工妊娠中是に関する基礎知識を詳しく解説していきます。
妊娠中絶は「母体保護法」によってルールが決まっている
人工妊娠中絶は「母体保護法」という法律によって、詳しいルールが定められています。母体保護法には不妊手術や人工妊娠中絶に関する事項が規定されていて、母体の生命健康を保護することを目的とした法律です。
母体保護法は以前は優生保護法という名前で、内容と名前が変更されて今の母体保護法になりました。人工妊娠中絶とは「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出すること」というものです。
手術ができる時期は妊娠22週未満
人工妊娠中絶の手術が可能な時期は、妊娠22週未満までと定められています。それ以降になると、ママの体にかかるリスクが非常に大きくなります。そのため母体の保護にはつながらないことから、手術をすることが認められていません。
ママの体に手術の負担が少ないのは、妊娠6〜9週前後です。それ以前だと子宮頸管がまだ固く、手術が非常に難しいのです。そしてそれ以降だと胎児がかなり大きくなるため、手術が難しくなってきます。妊娠12週以降は薬で流産させる、という方法が多く取られます。また妊娠12週を過ぎた場合は、死産の届出が必要となります。
妊娠中絶が認められるケース
人工妊娠中絶が認められるケースは、以下のとおりです。
・母体の健康上または経済上の理由により、妊娠の継続または分娩が母体の健康を著しく害する場合
・暴行もしくは脅迫などにより、性交の抵抗・拒絶ができなかった場合
以上の理由以外での人工妊娠中絶は、法律により認められません。もしもママが未成年である場合は、手術をすることになるため保護者の同意書も必要となります。事情により隠しておきたい場合でも無くてもいいとはなりませんので、ご注意ください。
妊娠中絶ができるのは資格を持っている医師だけ
どこの産婦人科でも人工妊娠中絶が受けられる、と思っている方もいるかもしれません。母体保護法により、中絶手術をおこなうことができるのは「母体保護法指定医」だけと規定されています。そのため母体保護法指定医がいない産婦人科では、人工妊娠中絶の手術を受けることができません。
母体保護法指定医のいる産婦人科は、ほとんどの場合いることを公表しています。もしも妊娠中絶を考えなければならない場合は、母体保護法指定医のいる産婦人科を受診してください。
妊娠中絶に保険は適用できる?
人工妊娠中絶では、手術をおこないます。医療費もかかることを考えると、保険が適用されないと困る、という場合もあるのではないでしょうか。特に経済的な理由で妊娠中絶を選ばなければならない場合は、保険が適用できるかどうか気になるところです。
ここでは、妊娠中絶に保険は適用できるのかどうか、詳しく解説します。
妊娠中絶は基本的に健康保険適用できない
人工妊娠中絶の手術については、基本的には健康保険の適用ができません。事前の検査などについてもすべて自費診療となります。そのため、どうしても手術費用が高額になってしまいがちです。
人工妊娠中絶手術は、妊娠から週数が経過するほど費用が高くなります。そのため人工妊娠中絶をするのかどうかの決断は、遅くなると肉体的・精神的負担に加えて経済的負担も大きくなってしまいます。
妊娠中絶に保険が適用できるパターン
人工妊娠中絶手術に保険が適用できるのは、以下の場合です。
・母体の中で赤ちゃんが死亡し、母体の外に出てきていない場合(稽留流産)
・妊娠の継続が、母体の生命の存続を著しく害すると医師が判断した場合
ママの体の中で赤ちゃんが亡くなってしまい、外に出てこないことを稽留流産といいます。この場合は一刻も早く亡くなった赤ちゃんを外に出さないと、ママの体や命に影響が出てしまいます。治療行為としての人工妊娠中絶をおこなうことになるため、保険適用となります。
また妊娠の継続がママの命を脅かすような場合も、保険適用となります。こちらも治療行為としての妊娠中絶をおこなう、という理由での保険適用です。
ただし、妊娠から85日以降の死産や妊娠中絶は出産とみなされます。そのため、健康保険から支給される出産育児一時金は対象となります。しかし経済的理由による人工妊娠中絶の場合は、出産育児一時金の支給対象とはなりません。
妊娠中絶の決断は周囲に相談をして
人工妊娠中絶の基礎知識と、保険適用について解説しました。人工妊娠中絶は、誰でもできるものではありません。手術を受けるには厳格な規定がありますし、資格を持った医師でない限りは手術をすることもできません。
保険が適用できる場合もありますが、基本的には適用外となるなどお金もかかります。しかし週数が進んでくると、今度は手術が大変になってきます。
人工妊娠中絶をするのは、大変な決断です。しかし決断に時間をかければかけるほど、体に負担もかかるしお金もかかってしまいます。できる限り自分に負担がかからないように、周囲に相談をしてみてくださいね。