「もうすぐ2歳になるのにスプーンで食べられない」「練習させなくちゃいけないの?」と心配しているパパ・ママは少なくありません。実際に保育園でもお家で練習をさせている家庭も多いです。
しかし、保育士の立場からいうと、少なくとも2歳まではスプーンを強要する必要はないと思います。今回は0~2歳児クラスまでを担当したことがある現役保育士の私、石原みりんがスプーンでの食事について解説します。
赤ちゃんがスプーンデビュー前に身につけておくべき力とは?
「食事のマナーが良い子に育ってほしい」とねがうパパ・ママの想いとは裏腹に、いつまでも手づかみ食べをする我が子…。そんな状況に焦りを感じてはいませんか?スプーンは無理やり持たせてもあまり意味はありません。スプーンを扱うために必要な力が揃ってくると自然と手を伸ばします。赤ちゃんが自分でスプーンを持つために必要な力をご紹介していきます。
スプーンを上手く扱うには、「手指の発達」が必要。
当たり前ですが、赤ちゃんの手指は不器用です。そんな不器用な手指は遊ぶことでだんだんと発達していきます。
赤ちゃんの手指を発達させるためには
様々な大きさのおもちゃ
多種多様な素材(柔らかい、固い)
重みの違うおもちゃ
など、いろいろな経験をさせてあげましょう。
また、手先の器用さだけでなく、肩が上がるかどうかも重要です。壁掛けのおもちゃなどで、肩を上げて動かす経験を促していきましょう。
スプーンを上手く口に運ぶには、「目と手の協応」が必要。
スプーンを握ることができても、口に運べければ食べられません。初めの頃、赤ちゃんはスプーンを頬に当てたりするでしょう。これは「目と手の協応」すなわち、目で見たものと自分の手が思い通りに動かせる力がまだ未熟だからです。
食事中にスプーンを上手く口に運ぶ練習を重ねていきますが、遊びの中でも「目と手の協応」を促していきましょう。
歯がためなどのおもちゃを口に運ぶ
穴の中に入れたり、出したりする
親子で「目」「口」などを指さしてふれあい遊びをする
食事中に「練習しなくはないけない」張り詰めた雰囲気になってしまうのは逆効果。せっかくの食事が美味しくなくなってしまいます。好きこそものの上手なれ。赤ちゃんには食事を好きでいてもらえるような雰囲気で。無理強いはしないようにしましょう。
スプーンから上手にご飯を食べるには、「唇で取り込む力」が必要。
スプーンを上手く口に運ぶことができたら、次は「取り込む力」が必要になります。この取り込む力は、パパ・ママのこれまでの食事の介助が影響することをご存知ですか?すなわち、食事を上手く食べさせてもらっていた子は自然と身についているのです。
食べさせ方を意識したことがなかった方は、これから是非この方法を実践してみてくださいね。
NGな食べさせ方は「パパ・ママが上唇に擦り付けるようにしてしまう」「口の中にスプーンを入れ込んでしまう」ことです。あくまでも、赤ちゃんが自分でくわえ込むのを待ちましょう。このように食べさせれば、赤ちゃんの「唇で取り込む力」は自然と身についていきます。
スプーンを始めるタイミングは「興味を示した時」!!
赤ちゃんはどのようにして自分で食事ができるようになっていくのでしょうか?パパ・ママが見通しつけることができると安心できますよね。赤ちゃんの意識や身体の成長がどのように進んでいくのか解説していきます。目安として時期を書いていますが、あくまでも目安です。「この時期にはこうなっていなければいけない」と思わず、お子さん自身の姿を見てあげてくださいね。
【離乳初期~】①ママ・パパに食べさせてもらう時期
パパ・ママが差し出すスプーンでご飯を食べる時期です。
この時期に大切なのは
唇で取り込む練習
しっかりと咀嚼し、飲み込むこと
飲み込んでから次の一口を食べること
適切な一口の量を学ぶ
スプーンは「食べる時に使うもの」と認識すること
これらの力がしっかりと身につくように食べさせてあげましょう。食事中は時間、パパ・ママの心に余裕をもってあげるのが一番です。
唇で取り込む練習は少しコツがいりますが、すでに紹介した食べさせ方を実践していれば、全て自然と身についていきますよ。
【離乳完了期~】②2スプーンで食べる「スプーンに興味!もってみたい」時期
「2スプーン」とは、大人用のスプーンと子どもが自由に持てるスプーンの2本で食事をすることです。子ども用のスプーンは準備しますが、全く使わなくてもOK!もちろん、手づかみ食べもOKです。
子ども用のスプーンを準備するタイミングはお子さんが「大人用のスプーンを持とうとする」など「スプーンを持ってみたい」という様子が見られた時です。
初めのうちは、スプーンを持って振り回したりするかもしれません。お皿を強くたたいたり、投げたりと、危険な場合は預かりましょう。
しかし、スープをスプーンでかき混ぜたり遊び食べも練習の一環です。楽しい雰囲気で食べることを心がけてくださいね。あまりにも遊んでしまい食事が進まない場合は様子をみてスプーンを預かり、食事に気持ちが向くようにしてみてください。
この頃の子どもの集中力は15~20分程度です。食事に満足している様子で遊び続ける場合は時間を参考に切り上げましょう。
【1歳2、3か月頃~】③上握りで食べてみようとする時期
本格的にスプーンで食べようとする時期です。
この頃には以下のような子どもの姿が見られるはずです。
スプーンを上側からしっかりと握れる手先の器用さ
スプーンを口の付近に運ぶことができる
唇で食材を取り込むことができる
肩が上がり、肩の力を使ってスプーンを動かす
上手くスプーンを扱えない子はこの中のどこかがまだ難しいのかもしれません。無理にスプーンを使わそうとせず、パパ・ママが丁寧に食べさせてあげたり、手づかみ食べの経験を積ませてみてください。また、遊びのなかでもたくさん体や手指を使うことで発達が促進されます。
また、この時期はスプーンの持ち方が大切。スプーンは上から持つ上握りがオススメです。変なクセが付かないように注意してくださいね。
【2歳6ヶ月~】④三点持ちで食べてみようとする時期
上握りでほとんどこぼさず食べられるようになると、次は大人と同じような三点持ちで食べるようになっていきます。
三点持ちを促していくタイミングは以下のような姿が見られるようになった時です。
上握りで食べている際、小指側が浮いてきている
姿勢よくテンポよく食べている
ほとんどこぼさず食べている
特に、小指側が浮いてきているというサインは子どもの指が「スプーンを親指、人差し指、中指だけで支えられるようになった」という証拠です。
「大人みたいにこうやって持ってみたら?」と促してみましょう。親指と人差し指を伸ばし、ピストルのような形を作らせてそこにスプーンを添えて握らせるという方法もあります。「バン!の手してごらん」と声をかけてみてください。保育士もこのように教えていますよ。
初めてのスプーンはシンプルなスプーンを!
赤ちゃん用のスプーンがたくさん発売されていて、どれが最もよいのか迷ってしまうパパ・ママも多いですよね。赤ちゃんが扱うスプーンは、親子でお気に入りのものが一番ですが、押さえておくべきポイントもいくつかあります!スプーン選びのポイントと保育士オススメのスプーンをご紹介します。
スプーン選びのポイント「持ち手の太いシンプルなスプーン」が一番!
赤ちゃんが握りやすいように「持ち手の太い」ものを選ぶのが鉄則です。
しかし、赤ちゃんが食べやすいようにと左右に曲がっているスプーンはあまりオススメできません。
理由は
赤ちゃんが右利きか左利きか、まだわからないから
いずれはまっすぐなスプーンで食べなければいけないのに変なクセがついてしまうから
保育園・幼稚園では普通のスプーンしかないから
などが挙げられます。まとめるとスプーンが曲がっていると、普通のスプーンに食べ辛さを感じることになってしまうということです。親切心が子どもの変なクセを付けてしまうかもしれませんので注意してくださいね。
口に当たる部分は「銀のステンレス製」で「少し小さめ」のものを!
保育園では一般的なステンレス製のものを採用しています。大人になってからも最もよく使用するのはステンレス製、銀製のものですよね。
シリコンなどのスプーンもありますが、口に当たる部分は一般的なステンレス製のものがオススメです。シリコン製は食材を集めやすいなどのメリットもありますが、あまりにシリコン製になれてしまうと保育園、幼稚園、小学校で苦労するかもしれません。使用するにしても最初のうちだけにしましょう。
面は子どもの口の大きさに合わせて、大人用よりは小さいものを選んでください。ティースプーンくらいの大きさが目安です。小さすぎるものは、食材を上手くすくえないなどのメリットもありますので、お子さんの器用さに合わせて選びましょう。
オススメのスプーン②「 はらぺこあおむし 」 こども用 スプーン M
はらぺこあおむしが描かれた可愛いデザインです。性別を選ばないデザインが人気です。
持ち手が太くなっており、子どもが握りやすい理想の形をしています。形も至ってシンプル。変に曲がっていたり、反っているわけでもないので成長を見越した上では、とてもよい食具だと言えます。またおそろいのデザインのお皿などもあり、そろえると可愛いです。
持ち手が磁器素材のため重みがあります。
- サイズ:約長さ14.5cm
- 素材:先端部-ステンレス,持ち手部-磁器
- 生産国:日本
【セット買い】「 はらぺこあおむし 」 こども用 フォーク M + スプーン M
食事を好きになってもらうのが一番の近道!
スプーンを上手く使ってもらうためには、練習よりも「楽しい食事」が一番の近道です。食べることが好きな子は自然と意欲的にスプーンを使って食べようとしますよ。
無理にスプーンを使わそうとしない
スプーンデビューの前に「唇で取り込む力」を付けさせる
持ち手の太いステンレス製のスプーンがオススメ
ご家庭でも楽しい雰囲気で一緒に食べてみましょう。その中で使いやすいお気に入りのスプーンがあれば、きっとスプーンを好きになるはずですよ。