育児介護休業法は1995年に施行され、直近では2019年に改正されました。この改正によって、看護休暇・介護休暇がより取得しやすくなるなど、いろいろな点が変更されました。
育児介護休業法が改正された背景には、働き方改革の推進や少子化対策、女性の雇用や活躍の場の拡大などがあります。育児介護休業法について、わかりやすく解説します。
育児介護休業法が改正されたのはなぜ?
育児休業と介護休業が法律に盛り込まれたのは、1995年のことです。この時代、出生率の低下とともに高齢化が急速に進んできました。そのため、労働者が仕事をしながら介護ができる仕組みを作ろう、ということで法律ができました。
法律の改正後に、ある程度は育休や介護休暇の取得率も上がってきました。しかしまた時代背景の変化によって、法律が改正されたのです。
なぜ改正されることになったのか、わかりやすく解説します。
働き方改革の推進
働き方改革という言葉が、よく聞かれるようになりました。2019年から始まった働き方改革ですが、簡単にまとめると以下の内容です。
・現在の働く人を増やす
・将来の働く人を増やす
育児休暇・介護休暇を取得しやすくして、労働と両立できるようにすることで働ける人を増やそう、ということです。さらに長時間の残業を減らし、出生率をあげて将来の働ける人を増やそうという目的もあります。
この働き方改革の一環として、育児休暇や介護休暇を取得しやすくするために、法律が改正されたということですね。
男性の育休取得率
2019年の女性育休取得率は83%でしたが、男性の取得率は7.48%と非常に低い水準でした。ノルウェーでは男女ともに90%超、スウェーデンでは男女ともに80%前後の取得率です。
実は日本は育休制度が非常に充実した国で、パパが育休を取れる日数では世界一です。それでも育休の取得率が上がらないため、さらに育休を取得しやすくするために法改正された、という点もあります。
高齢者の増加に対応するため
総務省の統計によると、2018年度の高齢者人口の割合は28.1%でした。2000年には17.4%だったことを考えると、かなりのスピードで増加しています。
参考:https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html
出生率が下がったことと、医療の進歩が大きな原因です。しかしこのままだと、介護をする人数が足りなくなるのが目に見えています。そこで介護と労働を両立させる目的で、法改正が行われました。
育児介護休業法の改正で何が変わったのか?
現在は、男性の育休取得率が低かったり、高齢者の増加に対応できていなかったりといろいろな問題があります。
それを改正するために、今までの育児介護休業法からいろいろな部分が変更されました。何が変わったのかを解説します。
介護休業・介護休暇の取得のしかたが変わった
介護休業は、介護が必要な家族1人について通算93日まで取得できました。しかし年間では1回だけしか取れず、30日取っても50日取っても1回でした。
この部分が改正され、年間で3回まで分けて取ることができるようになりました。例えば、30日→20日→43日、という取り方も可能になったのです。
子の看護休暇の取得のしかたが変わった
子どもの病気や、ケガの通院、予防接種などのときに取ることができるのが「子の看護休暇」です。これは、有給休暇とは別枠で取ることができる休暇です。
改正前は1日単位、年間5日まで取ることができました。これが半日単位で取ることができるようになっています。そのため、1日かからないような通院でも取りやすくなりました。
半日単位で取ることができれば、年間10回は取れます。日数は変わりませんが、非常に便利になったと言えるでしょう。
育児休業期間の延長が可能になった
育児休業が取れる期間は「原則として子が1歳になるまで、保育所等が見つからない場合に限り、1歳6ヶ月まで延長ができる」というものでした。
これがさらに拡充され、「1歳6ヶ月までに預け先が確保できない場合には、育児休業の追加申請ができ、2歳になるまで延長が認められる」という内容が追加されました。
これにともない、育児休業中に支給される育児休業給付の支給期間も延長されます。実質的に育児休業が長く取れることになるので、子どもの預け先を確保しやすくなり、仕事への復帰もしやすくなります。
事業主が育児休業制度の周知に努めることになった
男性の育休取得率を見るとわかる通り、育児休業制度を利用しにくい雰囲気を感じている方、または育児休業制度自体を知らないという方が多いようです。
この点を解消するため、事業主に対して「育児休業などの支援制度について、詳しい内容を個別に周知する」という努力義務が追加されました。
利用しにくい雰囲気の解消と、制度を知らない方を無くし、さらに育児休業制度を利用しやすくするという狙いがあります。
事業主が新たな育児休暇の設置促進に努めることになった
「就学前の子どもを持つ労働者に対して、育児にあてるための休暇制度新設に努める」という努力義務が、事業主に対して追加されました。
以前は就学前ではなく、「1歳未満の子どもを持つ労働者、またはケガや病気の子どもの世話をする必要がある労働者に対して」という条件でした。そのため、新設される育児休暇制度を利用できる労働者が増えることにつながります。
育児休業・介護休業を利用しよう!
今回の法律の改正では、いろいろな部分で内容が充実してきました。育児支援が充実してくることで、出産を前向きに考える女性や家庭も増えてくるのでは、と期待もされています。
せっかく法律で決められたことですから、制度を利用しないともったいないですよね。育児と仕事の両立や男性の育児参加は、ママにとって金銭面でも精神面でもぜひ進めていってほしいことです。
育児介護休業法の改正は、働きたいママにも育児に関わりたいパパにも、とても便利に育休が取れる内容になっています。せっかくの制度ですから、申請してしっかり利用してみてください。