赤ちゃんにお肌のトラブルは多く、病院にかかることも少なくありません。診察したときに、ステロイド剤を処方されたことはありませんか？ステロイドというと「強い薬」「副作用が怖い」など、ちょっとネガティブなイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、赤ちゃんにステロイドは使っていいのか、そもそもステロイドはどんな薬で、どんな効能があるのか、詳しく解説していきます。
ステロイドはどんな薬なのか
外用剤や内服薬、注射での投薬など多くの場面で使われるステロイド。非常にいろいろな病気の治療に使われ、大人から子どもまでステロイド剤を処方されたことがある方は多いのではないでしょうか。
一方、ステロイドというと強い薬であったり、副作用があったりとネガティブなイメージもあります。お医者さんが処方したとはいえ、赤ちゃんに使ってもいいものかどうか悩んでしまいますよね。
ここではステロイドはどんな薬なのか、どんな効能があるのかを詳しく解説していきます。
ステロイドはホルモンを応用してできた薬
人間の体にある「副腎」というところから分泌されるホルモンの働きを、薬として応用したものが「ステロイド」です。一口にステロイドといってもいろいろな種類があり、外用剤や内服薬として非常に多くの病気治療に使われています。
ステロイドの効能は多種多様
ステロイドは非常に多くの効能を持ちます。めまいの治療やぜん息の治療、皮膚炎、膠原病など、治療に使われる病気をあげるとキリがないほどです。赤ちゃんに対して処方されるのは主に外用剤で、皮膚の炎症を治療するために使われます。
ステロイドの主な効能は、以下のとおりです。
・抗炎症作用
炎症を起こす物質の産生を抑え、炎症が広がらないようにする作用があります。
・細胞増殖抑制作用
炎症反応を起こす細胞を増やさないようにし、炎症が広がらないようにする作用があります。
・血管収縮作用
炎症が起きている部分の血管を収縮させ、赤みを鎮める作用があります。塗った部分が白くなったように見えるのは、この作用です。
・免疫抑制作用
免疫機能のひとつである、リンパ球の増殖や機能を抑える作用があります。自己免疫疾患といって、免疫が自分の体を攻撃してしまう病気の治療にはこの作用が役立ちます。
ステロイド外用剤は、主に塗った部分の炎症をおさめる作用があります。そのため、湿疹や皮膚炎の治療に用いられることが多いです。
ステロイドは副作用が出ることも
「副作用のまったくない薬はない」といわれていますが、ステロイドも副作用があります。ステロイド外用剤の主な副作用は、以下のとおりです。
・皮膚が萎縮する
皮膚が萎縮して薄くなってしまうと、少しぶつけただけで内出血を起こすようになります。
・毛細血管の拡張
ステロイドには血管収縮作用がありますが、血の巡りが悪くなると少なくなった血流を補うために毛細血管が拡張してしまうことがあります。毛細血管の拡張も、内出血が起きやすくなる原因です。
・肌の乾燥
ステロイドを塗った部分が、乾燥しやすくなることがあります。放置すると肌の炎症がひどくなってしまうので、医師に相談の上でしっかり保湿をしておきましょう。
・多毛になる
塗った部分が多毛になる、という副作用があります。
もちろんこれらの副作用は医師も把握しており、副作用が出ないように細かく使用法を説明してくれますし、必要最小限の量を処方してくれます。最初にも書きましたが、副作用のまったくない薬は存在しません。医師の話をよく聞いて、説明された使用法どおりに使っていってください。
ステロイドは赤ちゃんにも使える？
ステロイドは、強い薬だというイメージがある方もいらっしゃるでしょう。いくら医師の処方だとはいえ、赤ちゃんに使うのは抵抗がある、ということもあるのではないでしょうか。ここでは、ステロイドは赤ちゃんにも使えるのかどうか、詳しく解説していきます。
赤ちゃんにも使えるステロイドがある
赤ちゃんにも使えるステロイドは、ちゃんとあります。ステロイドは作用の強さによって5段階の分類があり、弱い方から「weak・medium・strong・very strong・strongest」となっています。
このうち下から3つまでは、ドラッグストアなどでも購入できます。
またステロイド外用剤は、塗る場所によって体に吸収される割合が違います。これを吸収率といいます。前腕の内側を1とした場合、足の裏は0.14しか吸収されず、ほほは13も吸収されます。患者の年齢や患部を考慮して、医師がどの強さのステロイドをどれだけ処方するかを決定しています。主に赤ちゃんには、weakやmediumの強さが処方されることが多いようです。
医師の注意をしっかり聞こう
医師は患部や年齢等を考慮してステロイドを処方していますが、注意しなければいけないのは用法です。ステロイドを外用剤として使用するときには、医師から細かい注意があるはずです。炎症が起きている部分だけに塗るように指示があったり、他の場所で同様の症状があっても使わないように指示があったりします。
この指示は、必ず守るようにしましょう。素人判断で、同じ症状だから別の場所に使ってもいいや、というようなことは絶対にやめてください。前述したように、ステロイドは塗る場所によって体への吸収率がまったく違います。足裏とほほでは、吸収率が約100倍も違うのです。
どこにどれだけの量、どれだけの期間にどの強さのステロイドを塗るのかという判断は、医師にしかできません。医師の指示はしっかり聞いて、注意事項は必ず守るようにしてください。
ステロイドは高い効果を示す！用法に注意
ステロイドは副作用はあるものの、高い効果を示す薬でもあります。医師の指示で処方されたものであれば、赤ちゃんに使うことも問題ありません。ただし、医師の指示を守らないで適当に使ってしまうと、副作用が出てしまう危険性があります。
繰り返しになりますが、副作用のない薬はありません。どんなものでも使用法を間違えると、毒になりかねません。医師の指示をしっかり守って、ステロイドを有効に使っていってくださいね。
参考文献：吉村増隆「ステロイド外用薬の使い方：コツと落とし穴」
公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」
田辺三菱製薬「正しく使えばステロイド外用剤は怖くない！」